インナーマッスルとアウターマッスルでのEMSの違い

― 目的に応じた正しい使い分けとは ―


EMS(Electrical Muscle Stimulation)は、電気刺激によって筋肉を収縮させる治療・トレーニング手法ですが、どの筋肉を狙うかによって効果の現れ方は大きく変わります。
特に重要なのが、インナーマッスルとアウターマッスルの違いを理解した上での使い分けです。


インナーマッスルとは何か


インナーマッスルは、身体の深部に存在し、関節や姿勢を安定させる役割を担う筋肉群です。腹横筋や多裂筋、腸腰筋などが代表的で、日常生活では無意識のうちに働いています。


これらの筋肉は、意識的に収縮させることが難しく、加齢や痛み、安静期間が続くことで機能が低下しやすいという特徴があります。その結果、姿勢不良や慢性的な腰痛・膝痛につながるケースも少なくありません。


インナーマッスルに対するEMSの特徴


EMSは、筋肉を直接「鍛える」だけでなく、神経を介して筋肉を再び使える状態に戻すという点で、インナーマッスルと相性の良い手法です。


ただし、刺激を強くしすぎると、表層のアウターマッスルが先に反応してしまい、狙った深層筋まで刺激が届きにくくなります。
そのため、インナーマッスルを目的としたEMSでは、比較的穏やかな出力で、持続的かつ安定した通電が重要になります。


インナーマッスルに対するEMSの主な目的は、筋肥大ではなく、筋活動の再教育や活性化です。
姿勢の安定、体幹機能の改善、慢性痛の再発予防、高齢者の転倒リスク低減などが期待されます。


アウターマッスルとは何か


アウターマッスルは、身体の表層に位置し、関節を動かしたり、大きな力を発揮したりする筋肉です。
大腿四頭筋や大殿筋、腹直筋などがこれにあたります。
これらの筋肉は意識的に動かしやすく、EMS刺激にも反応しやすいため、「効いている感覚」を得やすいのが特徴です。


アウターマッスルに対するEMSの特徴


アウターマッスルを対象とするEMSでは、比較的高めの出力設定や、収縮と弛緩をはっきりさせた刺激が有効です。
筋力低下の予防やスポーツ後のリカバリー、トレーニングの補助として活用されることが多くなります。
即効性や体感を重視するケースでは、アウターマッスルへのEMSは非常に分かりやすいアプローチと言えるでしょう。


EMSパッドの役割は想像以上に大きい


インナー・アウターいずれの場合でも、EMS効果を左右する大きな要素のひとつがパッドの性能です。密着性が低いパッドでは通電ムラが生じ、刺激が局所的に強く感じられたり、逆に効きにくくなったりします。
特にインナーマッスルを狙う場合、弱い刺激でも安定して電流を伝えられるパッドでなければ、狙った効果を得ることは難しくなります。
EMS機器の性能だけでなく、パッドの素材・密着性・通電効率が結果に直結する点は、現場で見落とされがちですが非常に重要です。


まとめ


EMSは、強く流せば効果が高まるものではありません。
インナーマッスルとアウターマッスル、それぞれの役割と特性を理解し、目的に応じた刺激設計を行うことで、EMSの価値は大きく高まります。
「鍛えるEMS」と「支えるEMS」。
この違いを意識することが、EMSを正しく、そして長く活用するための第一歩です。


メディカのEMSパッドについて


メディカでは、医療・リハビリ現場での実使用を前提に、密着性・通電の安定性・皮膚へのやさしさに配慮したEMSパッドを開発・提供しています。


インナーマッスルを対象とした繊細な刺激から、アウターマッスルへのしっかりとした通電まで、現場の目的に応じて無理なく使い分けられる設計を追求しています。


EMSの効果を最大限に引き出すためには、機器だけでなく、パッドという「消耗品」の品質にも目を向けることが重要です。
日々の臨床やケアの中で、その違いを実感していただければ幸いです。